巨椋池を伝える一口の旧山田家住宅と巨椋池排水機場

京都の地名の話によく出てくる「巨椋池」と「一口(いもあらい)」。巨椋池はかつて宇治川の南にあった広大な池で、昭和6年の干拓事業により今は農地・工業地となりました。難読地名である一口は巨椋池で漁業をしていた漁村です。

では一口はどこにあるのか?

 

巨椋池の漁師を束ねた大屋敷

横大路から国道1号線を南に行き、宇治川にかかる橋を渡り西へ行きます。そうすると白い瓦葺きの形をした建物と西側に集落が見えます。ここが一口です。

地名板に振り仮名がないとわからないですね。一口の読み方は諸説が多く、正解はわかりません。

この集落にあるのが巨椋池の漁業を束ねた山田家の屋敷です。

江戸時代の武家屋敷のような立派な門構の屋敷。山田家は武士の位ではなかったそうですが、代々漁業権を取り仕切っており、周辺での権力者だったそうです。

建物の入り口も豪華です。今は山田家から久御山町へ寄贈され、町が管理しています。

とても広い広間。干拓前は周辺地域の漁民を集めて会議などをしたと思われますが、巨椋池が干拓され漁業が出来なくなってしまうと山田家の権力も落ち、屋敷の規模は縮小しています。それでも室内は見所が多いです。

欄間の魚は鯉。一口では正月になると鯛ならぬ睨み鯉が出されたそうです。

欄間には網代のものがあり、周辺でこのような仕掛けが多数あったのを想像させます。

部屋から庭を眺めると、塀の向こうは池でした。池の向こうに京都盆地を囲む山が連なり、江戸時代と現代とでは全く景色が違ったでしょう。

巨椋池の歴史に関する資料室もあります。

案内の方が巨椋池の地域に関する説明をしてくれます。京都では巨椋池を説明してくれる施設は意外とないです。

山田家の前の道路には今は川が流れていますが、干拓前は広大な水面が広がっていたとは思えません。それと、この前川沿いに並ぶ桜並木は隠れた桜の名所です。

巨大なポンプのある排水機場

巨椋池干拓後にできた、池に住んでいた生物を祀る大池神社。

京都市伏見区の端にある巨椋池排水機場、何の施設か知らない人も多いのではないでしょうか?
巨椋池は埋め立てとは違い、今でも池のようにすり鉢状の地形をしており、雨が降れば干拓地の水路の排水をしないと再び水没します。そのため機械的に川へ水を流す排水機場の施設が干拓された際にできました。今の巨椋池排水機場は平成18年に完成した2代目です。近くにも久御山排水機場があります。

実は巨椋池排水場は申請をすると見学ができます。中には巨大なモーターとエンジンがあり、大雨が降った場合はフル稼働して宇治川へ排水をします。

ディーゼルエンジンは大型船のものが使用されています。

上からエンジンのシャフトが降り、ポンプのタービンを回して排水します。計5台のポンプで6秒間に25mプールの水を排出できます。

こちらにも資料室があり、巨椋池の地形模型を使って解説してもらえます。

大池神社にある石碑。巨椋池は漁業をもたらしましたが水害が多く、干拓地化により洪水被害が無くなると思われましたが、昭和28年の台風13号の被害により元の池の様に水没しました。その後の治水として昭和39年に天ヶ瀬ダムができました。
広大な巨椋池干拓地は農業と工業一大拠点として、また高速道路網が整備され、今でも巨椋池は京都を支えています。

旧山田家住宅

一般公開日:毎月 第1木曜日、第2土曜日、第3日曜日
公開時間 :午前9時から正午
住所:久御山町東一口35番地
入館料:200円

久御山町WEBサイト